開店までの道のり #6

新刊書店の道は険しい?

 

2018年7月某日、私は神奈川県のJR桜木町駅にいました。
日本ブックカフェ協会による、ブックカフェ開業講座なるものを受講するためです。
時は少し前に遡ります。
本屋を始めるということで、とにかく情報を求めていた私はネットの海をサーフィンしたわけですが、具体的な情報は得られませんでした。
そこで何かハウツー本はないのか、と探した際に引っかかったのが「ブックカフェを始めよう!(青弓社)」という本。
これしかないと思い購入し読んだところ、その中でこの講座のことを知ったのです。
目的のオフィスへたどり着くと、講師である河野真さんがいました。(ちなみに1対1でした)
河野さんは、古本サイトとして有名な「スーパー源氏」を立ち上げたお方です。
とにかく最初は、すでにブックカフェとして繁盛しているお店の実例や、開業する際に気を付けること・必要なこと、営業する際のポイントなどをレクチャーしていただきました。
一通りレクチャーが終わると、私がその当時考えていた本屋像を河野さんにお伝えしました。
河野さんは私の話を聞いて一言、「面白そう、だけどきっと大変だよ」と仰りました。
面白そうというのは、本の本専門店にしたいということ、大変だというのは、古本ではなく新刊書店であること、ということらしいです。
出版業界にとって「新刊」とは、発売されたばかりの本のことも指しますが、基本的には業界の流通にのって小売店で販売されているものです。
古本というのは、誰かが買い、手放し、そして古物商の資格を持った者がそれをせどりし、売ることで古本となります。
見た目がどんなにキレイでも古本です。
逆に新刊というのは、一度本屋に並び、不要在庫として返品され、取次の、もしくは出版社の倉庫へ流れます。
その本が、またどこかの本屋に必要とされて再び流通にのり、販売されているとしても、それは新刊です。
どんなに傷んでいても、「まだ誰も買っていない本」ならば新刊なのです。
まれに無遠慮に立ち読みをされてボロボロになった雑誌を、「割引してくれたら買う」と言ってレジに持ってくるお客さんがいますが、出版社が決めた定価を小売店側が勝手に変えることはできない(再販制度)ので、お断りしています。
これも新刊の不思議なところです。
本が売れたときのお金の流れも違います。
古本の場合、本の在庫を維持するために「せどり」を行います。
古本は再販制度に関係ありませんので、小売店側がせどりした金額に上乗せして定価を定めます。
その本が売れれば、その売り上げは小売店側のものとなります。
これが新刊の場合、印税として著者や、発行した版元、商品を卸した取次、そして小売店に利益が分配されます。
ここまでくればお分かりだと思いますが、新刊を取り扱うよりも古本を取り扱った方が小売店の利益が高いのです。
流通にも問題があります。
古本は店主の資格と足、そしてせどりをするお金さえあれば、在庫を抱えることができるのに対し、新刊は多くの場合取次を通さなければ商品が入荷しないのです。
いくつかの限られた中小出版社の商品を取引するだけなら直取引でまかなえますが、何千冊もの在庫、しかもオールジャンルの本を揃えるとなると取次は必須です。
なぜここまでかというと、大手出版社は商品を取次にしか卸さないからです。
河野さんも、新刊書店を開業するにあたって、詳しい方法や伝手を知らないと仰っていました。
ブックカフェ開業講座の講師をつとめる方でも、具体的な手順が分からない。
(ちなみに私が書店員として働く某店の社員さんも分からないと言っていました)
その事実に愕然とし、同時にちょっとワクワクもしました。
これをやり遂げたら、なんかすごそう。(小並感)
新刊書店であることは、どうしても譲れない部分でした。
古本は、お客さんに本を提供するという点では安いし良いのですが、私は本を作ってくれた著者、そして版元や編プロ、印刷所の方々にもお金をまわしていきたいので、どうしても新刊が良かったのです。

もし、自分の蔵書を販売しつつ、カフェを経営したいなどと考えている方がいれば、この講義は有意義なものになると思います。
日本ブックカフェ協会は、様々なバックアップも行っているそうです。
書籍「ブックカフェを始めよう!」も、営業するにあたって必要な資格や、経営の落とし穴など、タメになることがたくさん書いてありました。
情報不足なこの業界、少しでも多くの知識を吸収したもの勝ちです。
ちなみに、私と同じく新刊書店の開業を考えている方は、赤坂の双子のライオン堂さんが主催している開店講座や、業界で様々な活動をされている内沼晋太郎さんの講座を受講されるとタメになるかもしれません。