開店までの道のり #7

急展開!?親会社との決裂

 

さて、「開業までの道のり」も第7回目となりました。
今まで、こういう本屋にしよう、こういう営業スタイルで行こう、と思っていたものが、ここにきてほぼ白紙になりました。
結論から言いますと、親会社の元で開業するのは止めた方が良いのではないかという私の考えから、自己資金で、そして自分の力で開業することにしたのです。
前々回の記事で、父の会社から新規事業という形で本屋をやります、という趣旨のものを書いたと思います。
予算も会社のものを使い、物件も自社物件を使い、私の給料も会社から支給されるという至れり尽くせりなこの対応。
それを手放すことになったワケを話すには、数カ月前に遡ります。

私が定期的に参加させていただいている会で、「本にかかわる人の交流会」というものがあります。
その名の通り、本に関わる仕事・活動をしている人ならば参加資格有という、とっても間口の広い会です。
書店員歴半年ほどの私(初参加時)でも、作家さんや版元さんと腹を割って話せるという素晴らしい機会でした。
そこで私は運命的な出会いをしたのです。
その会は横浜開催だったのですが、なんと北海道からいらした女性がいました。
しかも、北海道で本屋を開く準備をしていると言うのです。
その方の名前は加納あすかさん。
「かの書房」という屋号で来春オープン予定です。(もちろん北海道!)

そのときはあまりお話できなかったのですが、加納さんの存在は、本屋を始めたいとぼんやり考えていた私の背中を押してくれるものでした。
そしてその会が終わる頃には、「自分の本屋さんをやりたいなぁ」から「すぐにでも行動しよう」と考えが固まっていました。
加納さんと初めてお会いしてから数カ月後、改めて2人でお会いする機会を設けていただきました。
その当時、私が悩んでいたのは「取次を通すにはどうしたらよいか」ということでした。
新刊書店における取次の大切さはこれまでも述べてきた通りです。
ただ、私のように何の実績もコネもない人間は、いきなり大手との契約はできません。
信用も足りませんし、金銭的にも無理があります。
純粋に加納さんはどうするつもりなんだろうと思い聞いてみると、彼女は「新進」という会社と契約すると仰っていました。
新進とは、大まかに言えば大手取次と書店の間を仲介してくれる会社とのこと。
お話を聞けば聞くほど、この取次と契約できたなら、自分が目指す本屋の形に近いかもしれないと思いました。
思った数日後には私は名古屋にいたわけです。
名古屋には新進の本社があり、急なお願いにも関わらず、会社の方に相談に乗っていただきました。
私の中では「もうここしかない!」と決めていたので、東京に戻りすぐに社長(叔父)や会長(父)に打診しました。
そこでOKをもらい、晴れて契約…と思ったのですが、ここで急にこちらの会社が待ったをかけたのです。
契約書の内容で納得いかない、理解できない部分があると。
社長や会長の言い分としては、契約とは双方にとってのメリットデメリットが明確に表記されており、なおかつ対等な立場でより良いものへ変えていくべき、ということでした。
社長たちは間違ったことは言っていません。
ただ、社長たちは出版業界という世界を全く知りません。
「契約書にはこう書いてあるけれど実際はこう」なんて通例や、「普通はダメなんだけどここの会社のこの人なら大丈夫」なんて暗黙の了解などが飛び交っている世界です。
そんな業界腐っていると言われればそれまでなのですが、少なくとも、私は国が独占禁止法を変えない限りこの慣習は続いていくと思います。
社長たちに一生懸命説明し、新進の方に契約書の内容を変更できるかどうか打診して、色々と模索していくなかでふと、「これでは前と同じだ」という考えが降ってきました。
学生時代の部活動でもそうでした。
監督が全ての権限を持ち、私たちはそれに従うだけ。
何か行動したいとなれば、まず監督にお伺いを立て、何をするにも監督の許可が必要。
機嫌が良いときはへばりつき、機嫌が悪ければそっとしておく。
普通の会社に所属していれば、上司との関係でこんなことは当たり前のことでしょう。
けれどその「普通」が私にとってはストレスだったのです。
人から信頼されるために行動することはできますが、人の機嫌を取ることはどうにも苦手でした。
自分で身の回りのことを全て決められるように、自分でお店を持とうと動き始めたのに、これでは違う、そう思いました。
それに、もしこのまま契約ができたとしても、契約の時点でこれだけもめているようでは、この会社の下で本屋をやっていくのは、いつか問題が起こる、そう感じました。

こうして、社長の方には話を白紙に戻してもらい、新進との個人契約に踏み切ったのです。
使用予定だった物件も使えなくなってしまったので、これを機にもう少し都心寄りの立地で探してみたいと思います。
資金も大幅に減ってしまいましたが、まぁなんとなるでしょう。
現在進行形で事を進めていますので、よろしければ応援のほど、よろしくお願い致します。